
レースリポート

もしかしたらパン屋さんだった女子トップレーサー 遠藤エミ
2021.07.19
高校野球地方大会は真っ盛りである。全国各地にある球場の形やサイズはマチマチだが、塁間27.431m、PC間(投本間)18.44mで統一されている。
また、ソフトボールの塁間は18.29m、PC間は男子が14.02m、女子13.11mと規定がある。競技の基本スケールだ。
ボートレース場も広さや奥行きは水面ごとに異なるが、大時計前のスリットを中心に、1マークと2マークまでが150mとなっている。
周回展示で計測発表される展示タイムは、ほぼバックストレートの後半150mの航走タイム。通常6秒台後半が多いが、例えば展示タイム6秒80を速度に直すと時速約79.4㎞となる。
ちなみに、ソフトボール女子選手(1部リーグのプレーヤーの場合)は、右バッターがバットにボールを当てた瞬間から1塁までがおよそ4秒。左バッターが「スラップ打法」という1塁方向に走りながら打つ技法を用いると3秒強となる。ミスのできない緊張感の高いスポーツだ。
それに青春時代を打ち込んだ女子レーサーのひとりに遠藤エミ【写真2枚とも】がいる。
1886年(明治19年)に創立された伝統校・滋賀県立八幡商業高校の出身である。
ソフトボール部は、全国大会出場歴もある強豪チームだ。
ミスが許されないばかりか、1点差ゲームが極めて多い競技の宿命として「絶え間ない反復練習」と「精神を鍛える叱咤」が練習の基本。
それだけに、「すべてを真に受ける」性格では心身がもたない。底が抜けたように朗らかだったり、あっけらかんとしていたり、くよくよしない性格の者が多い理由だ。

トップレーサーでありながら強烈な闘志を感じさせない遠藤エミの「底が抜けたような自然体」の魅力はそこにある。多面的で重層な人間性が光る女性である。
そういえば、以前ボートレースびわこのトークショーで、「パン屋さんになりたかった…」と語ったことがあった。意外な感じがしたが、その場にいたファンの多くが静かにうなずいていたのを思い出す。
朝早く店を開くパン屋さん。そこに真っ白なコックコートを着たベーカーがいる。大げさな雰囲気はないが、静かに美味しいパンをつくる職人。…「遠藤エミさん」だ。
そうイメージできてしまうのである。
高い緊張感を強いられる世界でさりげなく努力し、強者に立ち向かう。そして結果に一喜一憂しない。多くに愛されるゆえんである。